ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

造血

その54."腸能力"に感謝② 血液は腸で造られる!

生理学博士 久間英一郎

前回は、「腸」は"ヒトの始まり"であり、ヒトの"玄関口"であり、ヒトの"生命線"であると書きました。
今回は、ヒトの生命(細胞)をつくり、生命を維持している「血液」もまた「腸」で造られているとする「腸造血説」について書きます。

私達は、学校では、血液は骨髄で造られると教えられました。現在の大学の医学教育でもそう教えられています。これに対し、国際自然医学会の森下敬一博士や、元岐阜大学教授の故・千島喜久男博士は、従来の「骨髄造血説」に反対し、「血液は腸で造られる」と主張しています。
胃で初期消化を受けた食物は、ドロドロの「モネラ」と呼ばれる状態で腸の粘膜をおおいつくし、絨毛上皮細胞から赤血球母細胞を経て赤血球が生まれると説明 されています。森下博士は、「消化とは、"食物という物質が赤血球という生命体に転換する働きである"」と言っています。そして、その赤血球は、分化(変 化発展)することによって体細胞になるのだと。
ここにおいて、「食」→「血液」→「体細胞」という図式が完成するのです。食べたものが腸で血液になり、体中回って体細胞になるのです。だから食物の質が悪いと血液の質が悪くなり、血液の質が悪くなると体細胞の質(体質)が悪くなることが理解できるのです。
「腸」は、この生命誕生のドラマチックな舞台ともなっています。だから「腸」という舞台環境がヒトの健康に一番大きな意味をもっていることがお解りいただけるでしょう。
中国伝統医学では、臍下三寸の場所を「丹田」といいますが、これは"赤い田んぼ"という意味で、「腸造血」を見事に暗示しています。
勿論、筆者も「腸造血説」を支持しています。なぜなら、「骨髄造血説」では、骨髄を持たない動物(例えばミミズ)にも血液があることが説明できないからです。
現代医学は、検査技術・手術技術・救急医療等においては素晴らしい発展を見せておりますが、長年の生活習慣の歪みによって引き起こされる慣性病(ガン他) には無力です。理由は明らかです。数十年にわたる食事を中心とした生活習慣の歪みが悪い血液を造り、その結果、悪い体細胞をつくった、いわゆる"体質病" が慣性病だから、手術・放射線・抗ガン剤等だけで治るはずもなく、食生活の改善を含む総合的な療法によって治すしかないのですから...。
一九七七年、激増したガン、心臓病対策に困ったアメリカが、その原因について調査した「マクガバン報告」もまた、「現代病の原因は、間違った食生活によ る"食源病"」と結論づけています。以来、アメリカでは、国をあげての食事改善が功を奏し、今日ではガンによる死亡率が低下しています。
日本の医学界も、早く「腸造血説」を受け入れ、食生活の改善を通して整腸浄血をはかり、体質改善につなげるという統合医療的療法にカジを切ることなくして未来の国民の期待に応えることはできないでしょう。是非そうあって欲しいと願っております。

くり返しますが、「食」→「血液」→「体細胞」の過程で、「血液」を造る大切な舞台が「腸」なのです。その腸内で主役を演じるのが腸内細菌です。次回はこの腸内細菌の働きと、腸内細菌に影響を与える様々な要因について書きます。

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