ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

その55."腸能力"に感謝③ 腸内細菌を敵に回すな!

生理学博士 久間英一郎

前回は、「血液は"腸"で造られる」と書きました。今回は、食物が胃腸で消化吸収される過程で活躍する腸内細菌について。

ヒトの腸内には、500種、100兆個とも言われる腸内細菌が存在し、一定のバランスを維持しています。
これらの腸内細菌は、食物の消化・吸収を助けたり、ビタミンB2・B6・B12 、パントテン酸、ビオチン、ビタミンK等のビタミンを合成したり、男性ホルモン、女性ホルモン等のホルモンを産生したり、インスリンホルモン様物質を産生して血糖の調整をしたりしています。
さらには、パプア族の中には、イモしか食べない(炭水化物ばかりでタンパク質はほとんどない)のに筋骨隆々とした民族がいますが、これは、空気中の窒素を使ってタンパク質を合成する腸内細菌が存在するからなのです。腸内細菌は、タンパク質をも合成するのです。
また、腸内細菌は、酵素の産生を促したり、血圧の安定に役立ったり、免疫を高めたりする働きもあることが判っています。ヒトの免疫細胞の約8割近くまでが 腸管に存在していることからも、腸内細菌が免疫に深く関わっていることが伺えます。その他、コレステロール代謝、虫歯の予防等にも関与していることが知ら れています。
こう見てくると、ちっぽけな腸内細菌といえども、これはもう"五臓(肝・心・脾・肺・腎)に充分匹敵するのではないか?つまり、肝・心・脾・肺・腎の働き をする腸内細菌の一団がそれぞれ進化して五臓に発展したと言えないか?ヒトは、五臓という専門臓器に加えて腸内細菌という「もう一つの臓器」を持っている (二重臓器説)と言えないか?"と医学博士、林秀光先生は主張しています。"だから、もう一つの臓器たる腸内細菌を大切にし、敵に回さないような食生活が 健康・長寿には不可欠なのだ"と主張しているのです。筆者も心から賛成しています。
では、腸内細菌を敵に回す(つまり腸内環境を、善玉菌より悪玉菌を優勢にする)食生活とは何でしょうか?
「府」(入れ物=胃腸の意)+「肉」は「腐」と書くように、肉・卵・牛乳や白砂糖・油脂等を摂り過ぎると、腸内は悪玉菌が急激に増加(腐敗)し、ニトロソ アミン、インドール、スカトール、フェノール等の発ガン物質が発生しやすくなります。さらには、肝臓を傷付ける硫化水素、アレルギーを誘発するヒスタミン を発生させたり、様々な病気の原因物質を作ったりします。
自分の腸内が腐敗しているかどうかを知るのは簡単です。便を見ればよいのです。便は、食物のかすと腸内細菌の死骸ですから、便の悪臭が強い人は危険信号です。
この他、腸内細菌に悪影響を与える要因としては、化学添加物・化学薬剤・水道水、それにストレス・冷え・運動不足・睡眠不足など。
『体を温めると病気は必ず治る』の著者、イシハラクリニックの石原結實博士の主張も、身体の冷えが腸内細菌のバランスを悪くするからであり、また、新潟大 学大学院教授、安保徹医学博士の"ストレスが自律神経の交感神経を緊張させるので、白血球(免疫)の力が低下し、ガンになり易くなる"との主張もストレス が腸内細菌に悪影響を与えるからなのです。
ですから、健康回復には、「温める」こと、「リラックス・笑い・感動」をたくさん集めて腸内細菌を敵に回さないことが必要なのです。
日本人の食性、つまり穀菜食を中心に、味噌・醤油・納豆等の発酵食品に、生姜・ニンニク・七味等をうまく利用し、身体を温め、大いに笑って腸内細菌をいつも味方につけて健康・美容・長寿を勝ち取って欲しいものです。

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