ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

その104.子供の免疫力の高さから 大人が学ぶ時が来た!

生理学博士 久間英一郎

前回、「ほとんどの子どもは実は自然治癒力(免疫力)が高い」と真弓定夫先生の言葉を紹介しましたが、それについて質問がありましたので今回は少し具体的に書いてみたいと思います。
 中国伝統医学の「小児科学」の教科書には「発病容易 伝変迅速 臓気清霊 易趨康復」という言葉があります。「(子供は)すぐに発病し、症状が刻々変化するが、臓器が清らかだから治り易い」という意味です。
 子供は生後半年位までは母親の免疫で守られていますのであまり病気をしませんが、その後はその免疫力は少しずつ低下し一歳位になるとほとんどなくなります。そうなると様々な菌やウイルスを引き込んで風邪や様々な病気にかかることになりますが、それと引き換えに免疫を獲得することになります。全ての子供達はこれを何度も繰り返しながら大人に近づいていくのです。
 従って子供達は病気のおかげで強くなる、免疫力が高まるとも言えるのです。パンダは生後すぐ土をなめるそうですが、ヒトの赤ちゃんもまた何でも手にとってなめようとするのです。言わばこれは病気と免疫を獲得するための仕事と言えなくもありません。だから余りにもキレイ過ぎない環境、できるだけ自然に近い環境を与えることが重要だと思います。「チョイ汚いくらいが元気」なのです。
 ここで重要なことは「子供は発病も早いが治るのも早い」という意味を正しく理解すること。そうすれば少々病気の症状があってもあわてなくて済みそうですね。
 もう一つは、本来清らかな子供の臓気が汚された時(例えば甘い菓子、冷たいジュース、肉・乳製品・加工食品等の過食やお腹を冷やした時等)は病気になっても不思議はないでしょう。
 ここで言う「臓気」とは「脾=胃腸」と考えるべきです。なぜならヒトのリンパ球や免疫細胞の約7割までが腸管粘膜に集中しているからです。腸は食物を消化・吸収する舞台だけに留まらず、造血を通して免疫を醸成する舞台だからです。元々子どもたちの腸内フローラは大人に比べて善玉菌優位の素晴らしい環境です。ですから子供の便を見て身体のどこにこんなビッグな便が入っていたのかと驚かれた方も多いでしょう。それだけ腸も血液もキレイで内臓もキレイなのです。
 これが前述のような食生活をすると腸内フローラが崩れて、毒素が腸内に蔓延し、免疫細胞がSOSを出すのが病気と考えると全て納得ですね。
 また、子供達は実によく動き回ります。そうすると筋肉がしっかり使われますので体温が高いのです。「体温が1度上がると免疫力は約6倍高くなる」(石原結實博士)と言われておりますので子供の免疫力が高い理由がご理解いただけると思います。
 ところが最近、テレビゲーム、塾やおけいこ等々で家に籠った生活ばかりして自然に触れていない子供達の中に低体温症が増えて問題になっています。元々子供は"風の子"ですから。
 体温が上がると代謝が高まり、そして血流が良くなります。子供達は体温に加えて元々腸内フローラやコラーゲン合成力が素晴らしいので、より代謝が高くなります。だから少々病気をしたりケガをしたり日焼けをしてもすぐに元に戻るのです。いくら食べても太らないのもこのためです。
 ここまで子供の免疫力について述べてきました事は全て私達大人の健康管理にも大いに役立つことばかりです。
 免疫力を高めるために、腸を汚さない食生活を心掛けること。バナナのようなキレイな大きな便を出すこと。筋肉運動をしっかりして体温を上げ、代謝・血行を高めること。
 これらは私達に今後忍び寄ってくる骨粗鬆症・関節痛といったロコモ対策、ガン対策、さらには認知症対策にも繋がることばかりですので、是非心掛けていただきたいものです。

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