ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

その他(食)

その39. 「吸収がよい」はそんなにいいことか?

生理学博士 久間英一郎

さて、最近「吸収がよいことは健康によい!」との風潮が蔓延していることにかねてより疑問を持っておりましたところ、富山医科薬科大学名誉教授、田 澤賢次医学博士が「大腸癌手術後の流動食・三分粥は果たして患者に適切か」というテーマで研究発表されましたので、この機に私見を述べたいと思います。

博士の発表の概要は次の通りです。従来、手術後には消化管の負担にならない様にとの理由で、消化されにくい食物繊維等は避け、消化吸収のよい流動 食・三分粥から与えてきたのですが、それは根拠が薄く、むしろ積極的に食物繊維を与えることによって本来の腸管機能を取り戻して、門脈血を浄化することが 重要であると実験結果を基に発表されたのです。

その理由は、いわゆる消化吸収がよいとされる食品成分は、腸管内で滞留し、タンパク質等を腐敗させるウェルシュ菌を繁殖させ、より多くの発ガン物質 をつくる可能性が考えられる。これに対し、食物繊維を与えると消化吸収され難いため、便の量が増え腸の蠕動運動を刺激し、その結果、便通もよくなりビフィ ズス菌等の腸内善玉菌の増殖にも役立ち、腸内浄化、血液浄化、免疫力向上につながるのです。実際に食物繊維を与える方が免疫力が上がり、肝臓等へのガンの 転移も減少したとのことです。

いわゆる消化吸収のよい食物(白米・白砂糖等)の問題点については、国際自然医学会会長の森下敬一博士も「整腸・浄血」の観点から同様の指摘をしています。

ベストセラー『病気にならない生き方』の著者、新谷弘実博士もエンザイム(消化酵素)の観点から「三分粥からの病院食は間違い」と指摘しています。 なぜなら、お粥はどろどろしているからよく噛まない場合が多く、通常食の場合には、よく噛む必要があり、それが唾液の消化酵素とよく混ざり合い健康増進に 役立つからです。

問題は「消化が速い」とか「吸収がよい」とかではなく、吸収された栄養の質、すなわち、どのような腸内環境の中で吸収されるのか、吸収された栄養がどれだけその人の生命力を引き上げるかにあるのです。

もし、「消化が速い・吸収がよい」ことがそんなに健康にいいことだとすれば、消化吸収のよくない食物繊維が健康食品店で売れる理由がなくなるだけで なく、白砂糖が黒砂糖より健康にいい、白米が玄米より健康にいいということになりかねません。今日、黒砂糖・玄米が白砂糖・白米より健康にいいというの は、充分に市民権を得ていると思っております。黒砂糖・玄米には食物繊維が多くゆっくり吸収されるので、インスリンの負担が軽く、糖尿の改善、ダイエッ ト、コレステロール代謝、便通改善、それに腸内細菌叢の改善による整腸、浄血、さらにはガンの予防にも役立ってくれるのです。

また、最近話題のコラーゲンにしても、吸収がよいとされる低分子コラーゲンより、自然に近い高分子コラーゲンの方が免疫力に優れている(榎木義祐博士)とされています。

賢明な読者の皆様は、「消化が速い、吸収がよい」などという耳障りのよい言葉に惑わされることなく、本質を見据えて健康、長寿を勝ち取っていただきたく思っております。

久間 英一郎の話を直接聞こう!!

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