ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

その他(食)

その113.簡単・便利・安い・旨いには危険がいっぱい! 「食材にひと手間かけて...」を基本とせよ

生理学博士 久間英一郎

今回は、コピー食品(もどき食品、代替食品)の危険性について書きます。
 先日のテレビニュースで牛が吐き出すメタンガスが地球温暖化対策上問題だと言うのです。そこでハンバーグの材料を牛肉から大豆に代えて好評だと言う。
 このニュースを見て筆者は二つのことを思いました。一つは、牛肉と地球環境との関係をやっとメディアが取り上げたかと。もう一つは、動物性(肉)より植物性(大豆)が健康的だという点です。かつて動物性バターより植物性マーガリンが健康的と国を挙げて宣伝されたことがありました。勿論、皆様は植物性マーガリンにはトランス脂肪酸が多くて問題だとご存知かと思います。(最近ではトランス脂肪酸の少ないマーガリンも開発されているようですが)
 ところで、この代替肉の原料は、ほとんどが大豆から大豆油などを搾った残りカスです。商品表示には粒状植物性タンパク質等と書かれています。
 この大豆タンパクの特長は大豆本来の栄養も旨味もありませんが、カスですから当然安いのが利点です。この安い大豆タンパクに旨味・食感・見映えを出すための魔法の粉が食品添加物です。
 この添加物のおかげで大豆タンパクは一瞬のうちにコピー肉に変身し、メーカーのコストダウンに貢献し莫大な利益を生むのです。
 この他にも、コピー肉は、レトルトや冷凍ひき肉製品、カップラーメンの肉、プレスハム、弁当さらには和洋中華を問わず外食産業に使われている可能性が高いので要注意です。
 海産物の場合も同様です。代表的なものは、元祖コピー食品と言われるカニカマです。見事なでき映えで大ヒットしました。原料はスケトウダラです。この魚は味が薄く魚としての価値は低いのですが、これがコピー食品の材料としてはむしろ好都合。魔法の粉次第でどんな味にも染まるからです。
 少し製造過程を追ってみましょう。 「北洋で獲れたスケトウダラは母船上で直ちにすり身に加工されて冷凍保存され日本に運ばれます。この段階ですでに魚肉タンパク質の変質を防ぐためにショ糖やソルビットなどが添加されています。この冷凍すり身をカニに変身させるために加えるものは、食塩、でんぷん、化学調味料、グリシン、アラニン、カニエキス、カニ香料、水、そして卵白です。
 問題はカニエキス、カニ香料と称するものの正体です。これを混ぜればカニを一片も使わなくてもカニの味と香りを出せるという便利なものですが、これこそ食品添加物のかたまりとみて間違いないでしょう」と専門家は指摘します。
 これをさらに本物のカニに近づけるために赤色三号などの赤い色素を使ってカニそっくりに仕上げて完璧。こう見ると、カニカマとはスケトウダラに化学調味料と食品添加物を混ぜ合わせた食品加工技術の傑作と言えるのです。
 カニカマの大成功に刺激を受けて、その後、ホタテ風味フライ、イカ風味フライなどにも利用されています。
 人工イクラもコピー食品です。人工イクラを開発したのは食品メーカーではなく接着剤のメーカーだと言う。接着剤の強度の研究中に偶然イクラ的なものができてしまい、これに魔法の粉(添加物)をふりかけて人工イクラに仕上げたと言う。安いイクラにはご用心!
 このように安い原料に魔法の粉(添加物)をふりかけるとあらゆる簡単・便利・安い・うまい食品ができてしまう食品加工技術の進化は、果たして人の幸せ、社会の発展に貢献できるのか頭を抱えてしまいます。
 添加物相互間の量的増加がどう質的変化をもたらすか、またこれらが日頃常用している薬剤との飲み併せの害も未確認の情況下で私達を守る唯一の方法は、やはり「手を出さないこと」に尽きると思います。
 特に、未来を託す子供達には是非「自然の食材にひと手間かけて...」を実行しいていただきたいと思います。それが健全な味覚を育てていく道です。健全な味覚を識別できる健康人間は社会の財産ですから。

前の記事 コラム一覧へ戻る 次の記事
トップ