ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

その27. 腸内細菌のはなし(上) 「食べた物が毒になる!?」

生理学博士 久間英一郎

今回から二回にわたって、腸内細菌に視点を置いて戦後の食生活の変化を考えてみたいと思います。

腸内細菌というと、皆様はビフィズス菌や大腸菌を連想されると思いますが、腸内にはこれらの腸内細菌が100種類100兆個も存在していて、これら が一定のバランスを保ちながら腸内フローラ(細菌叢)を形勢しています。健康な方の腸は、ビフィズス菌などの善玉 菌が優勢で、便も悪臭が少なく、一方、病気の方の腸は、ウエルシュ菌や病原性大腸菌等の悪玉 菌が優勢で、便も悪臭が強いのです。

ところで、戦後の食生活の変化を一言で表現すれば、"「三白食品」の氾濫と肉(牛乳)の過食"にあると言えると思いますが、この変化は果 たして我々の腸内フローラを善玉菌優勢に導いたか、それとも悪玉 菌優勢に導いたのでしょうか。

前述の「三白食品」とは、白米(精白パン)、白砂糖、添加物のことですが、このうち白米(精白パン)と白砂糖は、共に本来の姿から精白という名のも とにビタミン、ミネラル、酵素、食物繊維の大半を削り取られた食品となっているため、腸内から排泄されにくく、消化酵素の活性を鈍らせたり、腸粘膜の機能 を失調させ、その結果 、腸内で異常発酵を起こして腸内フローラのバランスを狂わせ、腸内腐敗を助長することになるのです。添加物は、大半が化学合成品ですので、腸内フローラを 乱すもとになります。

次の肉(牛乳)食はどうでしょうか。肉や牛乳は、低温で保存しておかないとすぐ腐敗することでもわかるように、また、五臓六腑の「府」に「肉」がつ くと「腐」となり、腐敗を意味することでもわかるように、肉(牛乳)食は、悪玉 菌が大変好む食物であり、そのため悪玉菌を繁殖させ、腸内を腐敗させるのです。当然、便は強烈な悪臭を発します。これらの悪臭成分には、硫化水素、アンモ ニア、インドール、ニトロソアミン等があり、肝臓を傷めたり、発ガン物質となったりします。これらの毒素が血液を汚し、生活習慣病の元凶となっているので す。

逆に世界的に長寿で有名なコーカサスや、昭和30年前後までの山梨県棡原村の長寿者たちの便は臭くなかったそうです。長寿の条件は、腸内フローラを守ってきれいな便を出すことなのです。

腸内細菌は、ビタミン、ホルモン、タンパク質、酵素を合成し、消化吸収に加え、免疫にも深く関わっており、まるで五臓(肝・心・脾・肺・腎)に匹敵 する存在(『二重臓器』神戸大学・林秀光博士)なのです。有り難いことに私達は、五臓に加え、腸内細菌というもう一つの"臓器"を持っていますので、これ に感謝し、これを信じ、これを傷めることなく守っていくことが健康上極めて重要なことなのです。

腸内フローラを乱す要因には、前述の三白食品や肉食だけではなく、冷えや便秘、暴飲暴食、薬の乱用、睡眠不足、それに忘れてはならないストレス等があります。これらの要因をできるだけ少なくして、健康寿命を延ばしていただきたいと思っております。

次回は、「腸内細菌と造血・免疫」、そして「善玉 菌を増やす食」について。

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