ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

伝統食放射能

その61.原発の惨禍を伝統食復活のテコとせよ!

生理学博士 久間英一郎

前回は、命を繋ぐ"発酵食品"が生活習慣病にも、放射能・食中毒にも役立つことを書きました。
 今回は、結論から申し上げると、伝統的日本食を復活させることが、私たちにできる最大の放射能対策であり、原発事故の教訓を生かす道だと申し上げたいのです。
 ご存知の通り、原発事故による放射能被害は、呼吸や飲食物から体内に入った放射性物質による内部被曝に深化しています。水に始まって魚、野菜、果実、肉、牛乳さらには穀物に至るまで、その汚染が心配されています。
 こういった中で、私たちにできる対策は何か? 心配される放射線の種類は、ヨウ素、セシウム137、ストロンチウム90が知られていますが、このうちヨ ウ素は、半減期(発する放射線量が半分になるまでの期間)が8日であり、加えて日本人はコンブ、ワカメ、ヒジキなどのヨウ素をよく食べることである程度予 防できます(チェルノブイリ近郊の町キエフは海から遠いせいでヨウ素の摂取量が不足していたことが後の甲状腺ガンに繋がったとされる)。
 次に、セシウム137(半減期は30年)とストロンチウム90(半減期28・8年)。このセシウム137はカリウムと、そしてストロンチウム90はカル シウムとそれぞれ非常に構造がよく似ていますので、体内にカリウム、カルシウムが充分に足りていると、余分なセシウム137やストロンチウム90は吸収さ れずに排出されやすいのだそうです。従って日頃からカリウム(野菜、納豆、梅干、種子など)やカルシウム(野菜、海藻、ゴマ、小魚など)をバランスよく摂 取することが大切です。
 また、放射線の害は、活性酸素の害であるため、同じ野菜でも色が濃く抗酸化力の強いニンジン、ホウレン草、ブロッコリー、トマトなどを積極的に摂取することが望まれます。
 長崎に原爆が投下された時、爆心地から1.4kmにいた医師の秋月辰一郎先生は、入院患者に塩味の効いた玄米おにぎり、カボチャやワカメの味噌汁、梅干などを与えた所、放射線によるひどい原爆症がほとんど出なかったといいます。
 以上の放射能対策食事と前回書きました発酵食品を合わせると、それは何を隠そう、伝統的日本食そのものなのです。肉・卵・牛乳・白砂糖・添加物にまみれた欧米食とは違うのです。
 なぜ伝統食がいいかというと、伝統食は、生命力が豊かで脂肪の質が良いことに加えて、日本人の長い腸を守るからです。図は、ラット全身に放射線を照射す る前後の写真です。明らかに照射後、腸の絨毛は絶えなんとしているのがわかります。腸は以前にも書きましたが、栄養の吸収だけでなく、血球を造り、免疫細 胞の8割近くを有する組織ですから、腸の死はヒトの死へと繋がるのです。伝統食はこれを救うのです。
 現在日本は、1,000兆円の借金があり、次世代に残していくしかない状況です。加えて、放射能による将来の健康不安を残しでもしたら死に切れるもので はありません。そうしないためにも、せめて先祖が残してくれた貴重な伝統食の力を子供たちに伝えなければならない責務が私たちにあると思います。原発に対 する反省と教訓を伝統食復活に繋げましょう。心からそう願っています。
 「食乱れて国亡ぶ」という言葉があります。原発事故は、戦後の食の乱れに警鐘を鳴らしているように思えます。
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