ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

その53."腸能力"に感謝① 「腸」はヒトの始まり!

生理学博士 久間英一郎

読者の皆様、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
今回より数回にわたって健康に一番重要な「腸」について書きたいと思います。今回は「腸」の概論として、「腸」を少し大きく捉えてみたいと思います。

ところで、一年の始まりは元旦。動物の始まりはというと、これが「腸」なのです。史上初めて一つの体制をもった動物とされるヒドラ等の腔腸動物は、 腔腸という腸管しかなく、この腸管一つで消化吸収や呼吸を行なってきました。これが進化の過程で腸管から枝分かれしたものが肺であり心臓であり、そして肝 臓・腎臓なのです。動物は「腸」から始まったのです。
次にヒトの体内と体外を分ける境目、即ちヒトの玄関口はどこでしょうか?口や鼻と思われる方も多いかと思いますが、これがまた「腸」だと筆者は考えます。

なぜなら、口から入れた食物の未消化物が肛門から出てくるように、口から肛門までは一つのパイプ状になっているので皮膚の延長、即ち体外と考えま す。これに対し、腸の粘膜から吸収された後の世界は、手が届きませんので体内と考えるからです。やはり「腸」がヒトの玄関ということになります。
この玄関口がキレイだと家内(体内)は健康、汚れていると家内は不健康となるのは当然なのです。ここに健康になる鍵が隠されています。(詳細は次回以降)
もう一つ、皆様、植物を連想してください。植物は、土壌から根毛を通して(図1)水や栄養を吸収して生きています。その水や栄養がなくなれば植物は死んでしまいます。逆に水や栄養を与え過ぎるとどうなるでしょうか。根腐れを起こしてこれも死んでしまいます。

では、植物にとっての根毛は、ヒトにとってはどこに当たるのでしょうか。これぞまさしく「腸」なのです。腸管内には図2のように無数の突起物(絨 毛)が存在し、その粘膜から栄養素を体内に吸収しているのです。(絨毛を含め腸を切り開いて広げるとテニスコート二面分といわれる。)この絨毛と植物の根 毛とが極めて酷似していると思われませんでしょうか。ヒトの絨毛と植物の根毛は、まさに栄養素を取り込む"生命線"であることが容易に理解されます。だか らこそ、絨毛と根毛の環境がヒトと植物の健康を左右する鍵になるのです。
前述の通り植物の根毛に栄養がなくなっても与え過ぎても植物が死ぬように、絨毛に栄養がなくても与え過ぎてもヒトが危機に陥るのです。現代の生活習慣病は、まさにこの絨毛に栄養を与え過ぎたために引き起こされた食源病ということができるのです。

以上のように「腸」は、"ヒトの始まり"であり、ヒトの"玄関口"であり、そしてヒトの絨毛の環境こそがヒトの健康の"生命線"であることを念頭に入れていただき、次回以降の各論を楽しみにしていただきたいと思います。
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