ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

選食

その5. 「選食」の視点① "一物全体食"

生理学博士 久間英一郎

今月から数回に渡り、健康生活を送るために食をどのように選べば良いか、その視点について書いてみたいと思います。中国伝統医学東京学院学長の飯野 節夫博士は、「選食」は今日では「環境境域」と共に「読み」「書き」「算術」に匹敵する教育目標の一つになっていると指摘しています。人の体が全て食の化 身である以上、良い「選食」の視点を持つことは健康上、極めて重要なことなのです。

さて、「選食」の第一の視点は、「一物全体食」です。文字通り、"一つの物は全体を食べるべし"という教えです。魚なら頭から尾っぽまで、芋や人参 は皮付きのまま、米は玄米、砂糖は黒砂糖で食べるべきという意味です。今日、大半の人は、魚は刺身か切り身、芋や人参は皮むき、米は白米、砂糖は白砂糖で 食べていらっしゃるかと思います。このような食は"一物全体食からかけ離れた部分食"(ちなみに白米の字を並べて書くと粕になり、糠(ぬか)とは米が康 (やす)らかになったものなのです。「精製」や「美食」という名のものに削りとられて捨てられた部分にこそ体に最も必要なビタミン、ミネラル、食物繊維、 さらにはコラーゲンなどが豊富に含まれているのです。

「一物全体食」には、生命(いのち)が存在しています。白米に水を与えても芽は出ませんが、玄米に水を与えると芽が出ます。芋も皮をむくと芽は出ま せんが、皮付きだと芽が出ます。つまり、玄米も皮付き芋も生きている、生命があるのです。私たちが食物を食べるということは、その食物の持っている生命力 をいただくことなのです。生きている私達の生命を養うのに死に餌(部分食)が良いか、生命力あふれる「一物全体食」が良いかは明白です。このように、「一 物全体食」には、"食物の生命力を感謝していただきなさい"という意味が込められていると考えます。

現代栄養学では、「一日に30品目を食べなさい」と指導していますが、部分食ばかりを30品目とっても栄養のアンバランスが拡大するだけなのです。「一物全体食」なら少ない品目で充分なのです。

ところで、昨今は環境ホルモンや残留農薬などの影響で本来は正しいはずの「一物全体食」を安心して実行することが難しくなってきています。これ以上食物環境が悪化しないよう皆様と共に食を守っていく努力を続けていかなくてはと心に命じております。

前の記事 コラム一覧へ戻る 次の記事
トップ