ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

牛乳

その69.「牛乳」是か非か?(下) 牛乳の飲み過ぎこそ骨粗鬆症を招く

生理学博士 久間英一郎

戦後日本の栄養指導を簡単に言うと、
1.日本人は体格が小さいから、高脂肪、高タンパク、そしてパン食がよろしい(米を食うとバカになるとも)
2.肉・卵・牛乳は"完全食品"と呼ばれるほど栄養が豊富、特に牛乳にはカルシウムが豊富で、体を大きくし、骨を丈夫にする...等々だったように思います。

 この思想に従って、子供からお年寄りまで、「牛乳=カルシウム=骨」という「牛乳神話」ができあがった訳です。

 しかし、これには重大な間違いが存在しています。「牛乳にはカルシウムが豊富に存在している」のはその通りです。が、そのカルシウムが骨を丈夫にするかと言えば、それは決して正しくないのです。

 ミリオンセラー、『病気にならない生き方』の著者、新谷弘実博士によると、「牛乳の飲み過ぎこそ骨粗鬆症を招く」と指摘します。
 なぜかと言うと、「人間の血中カルシウム濃度は、通常9~10㎎(100cc中)と一定しています。
 ところが、牛乳を飲むと、血中カルシウム濃度は急激に上昇するそうです。そのため一見すると、カルシウムがより多く吸収されたように思いがちですが、こ の『血中濃度の上昇』こそが、悲劇をもたらすのです。じつは、急激にカルシウムの血中濃度が上がると、体は血中カルシウム濃度をなんとか通常値に戻そうと 恒常性コントロールが働き、血中余剰カルシウムを腎臓から尿に排泄してしまうのです。つまり、カルシウムをとるために飲んだ牛乳のカルシウムは、かえって 体内のカルシウム量を減らしてしまうという皮肉な結果を招くのです。牛乳を毎日たくさん飲んでいる世界四大酪農国であるアメリカ、スウェーデン、デンマー ク、フィンランドの各国で、股関節骨折と骨粗鬆症が多いというのはこのためでしょう」と牛乳のカルシウムの問題点を鋭く指摘しています。

 これに対し、日本人がカルシウム源としてきた小魚や野菜や海藻等は、牛乳ほど急激に吸収されることはありませんので、骨粗鬆症の心配はないそうです。

 少し別の角度からも考えてみましょう。陸に住む哺乳動物の中で、一番大きな骨格を持つアフリカ象を想像してください。彼らは、5トン(私たちの体重の約 100倍)もあるにもかかわらず、牛乳は飲まないばかりか、草や木の芽等カルシウム濃度の低い食物を食べて巨大な骨格を維持しているのです。この事実をか みしめなければなりません。
 以上から、「骨の強化に牛乳は不要」という結論に至るしかないのです。
 こう言ってきますと、少し勉強している栄養士等から「それでは国の指導する600㎎は摂れません」とクレームをつけられることがありますが、心配はありません。
 そもそも、この600㎎に科学的な根拠はなく、日本人のカルシウム摂取量が300㎎台だったことに対し、欧米人が1000㎎近く摂っていたことから、2倍位あったほうが...という位のところだったそうです。
 そこで、『伝統食の復権』の著者、島田彰夫博士の言葉で締めさせていただきます。
 「日本人にとって最も大切なことは一刻も早く完全に『離乳』すること、...カルシウムは牛乳からではなく、緑色野菜、大豆製品、小魚、海草などから摂るほ うがいい...(カルシウム摂取量については)日本人の過去の実績や、他のアジア人、アフリカ人などの状況から400㎎程度で十分でしょう。」ここでも、やは り伝統食なのです。

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