ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

血圧

その79.血圧と降圧剤を考える(上)血圧は薬で無理に下げない方がよい!

生理学博士 久間英一郎

 国の最近の健康行政の関心事は、激増する認知症対策だそうです。筆者はその話を聞いてすぐ浮かんだことは、「降圧剤の乱用を止めること」でした。
 なぜなら、歳を重ねると血流が悪くなるので、血圧を上げることによって新鮮な血液を脳に上げようとしているのに、薬で血圧を下げてしまったら脳に血液が届き難くなり、認知症にならざるを得ないからです。
 そこで今回は、血圧と降圧剤について考えたいと思います。
 2000年までは、血圧の上(収縮期)が160、下(拡張期)が95以上を高血圧と定義していましたが、その年に140/90以上が高血圧ということに変更されました。従って、それを超えると、通常の場合、降圧剤が処方されることになります。そうすると、約5000万人が高血圧患者となり、製薬会社の売上げは現在の3倍以上、1兆円以上の上乗せになる(浜
六郎『高血圧は薬で下げるな』角川oneテーマ21)そうです。
 そこで、石原結實博士の言葉をお借りすると、「定義によれば、国民の約半分が高血圧ということになる。およそ半数を占めるということは、言い換えれば、それが普通のことであるとも言える」として、この基準の設定に疑問を投げています。
 そもそも「冬は寒いがために血管が収縮する。つまり、血液の通り道が細くなるので、心臓は力を入れて全身の細胞に血液を送り届けようとして血圧が上昇する。また、歳をとってくると、動脈硬化を起こして、血管が細くなる。その上、次第に柔軟性が失われてくるので、心臓が力を入れて血流をよくしようとして血圧が上昇する。極めてまっとうな自然の道理である。
 仮にこうした場合に血圧が上昇しなければ、血液の供給量が不足してしまう。そうすれば、全身の細胞に栄養、酸素、水、免疫物質が届けられなくなり、十分な働きができなくなってしまう。」
 つまり、高血圧もそれぞれの環境にあって、その必要性があって上がってるという訳です。だから、血圧は「低ければよい」ということにはならないのです。
 一方、前述の新基準で降圧剤が処方されると、血圧は下がり、脳卒中、心臓病、網膜症等のリスクは下がるでしょうが、前回も書きましたように、頭痛、めまい、動悸、吐き気他様々な副作用があります。
 1980年に実施された厚生省『循環器疾患基礎調査』対象者1万人に対して、14年間に及ぶ追跡調査の結果、降圧剤を飲んでいる人の方が飲んでいない人より自立度(脳卒中他の理由により、人の助けを借りずに生きていける度合い)が低いことがわかりました。
 また、降圧剤を飲んで正常血圧(120〜140)を保っていた人は、降圧剤を飲まずに(160〜179)もある人より自立度が低かったこともわかりました。
 2008年実施の無作為化比較試験(JATOS)でも、降圧剤の危険性が示されています。
 65〜85歳の血圧160を超える人4418人に降圧剤を投与し、A群(140未満に下げる群)、B群(140〜150に下げる群)に分けて2年間観察した結果、脳梗塞の発症、脳梗塞による死亡、総死亡数共にB群がA群より明らかに少数でした。降圧剤で下げる場合も大幅に下げない方がよいということです。これは真夏に部屋の温度をエアコンで大きく下げない方が体によいのと似ていますね。
 また、茨城県の調査でも「160/95以上の高血圧でありながら降圧剤を飲んでいない人は、降圧剤を服用して140/90未満の正常血圧にコントロールしている人より、あらゆる病気で死亡する全死亡率も、ガン死亡率も低かった」そうです。
 さらに、降圧剤はガンの発症リスクを高めるだけでなく、新薬の場合、長期に服用した時の副作用がすぐには見えてこない不安が常につきまといます。
 以上から、石原結實博士は「いわゆる高血圧の随伴症状がひどくない限り160/100ミリHgくらいまでは、無理に下げる必要はない」と結論づけています。
 また、前述の浜六郎医師は「180/100まで治療はいらない」と言っています。詳細までは当欄では書き尽くせませんので、血圧が気になる方は前述の本をご参照ください。
 次回は、血圧を下げる食生活について。

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