ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

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その22. 貝原益軒「養生訓」に学ぶ(下) 「少」を尊ぶべし

生理学博士 久間英一郎

前号では、貝原益軒「養生訓」が教える養生法のうちの"食"に関する部分について書きました。

その概要は、量は「腹八分」、濃い味付・脂っこいものを排し、淡白なものを食べ、五味(酸・苦・甘・辛・塩)のバランス・穀と肉のバランスをとり、老人や体調の悪い時は少食にし、四季を問わず温かい物を食べ、食後には軽い運動を...というものでした。

今回は生活面について書きます。まずは「色欲」について。

益軒は「色欲を欲しいままにしてはいけない。」といっています。中国伝統医学では、精気(精力)は腎に蔵しており(「先天の精」)、また「腎は五臓 の本である」ので、「色欲」が過ぎると「腎」を損なうことになり、「『元気』、『精気』を費やして寿命を短くするもと」になります。精気を高めるには、す なわち「腎」を高めるには、脾胃(胃腸)の力(「後天の精」)を強めなければならないとしています。

次に「目」については、「歳が四十歳以上の者は、用事のない時は、いつも目をふさいでいるのがよい」。パソコン等で目が疲労している現代人には特に参考になります。「時々両手を擦り合わせて温め、その手で両眼を温めてのばすようにする」ことを勧めています。

「歯は、しばしばカチカチと軽く打ち鳴らしなさい。歯を堅くし、虫歯にならない」。

「髪は、よく櫛けずりなさい。"気"は巡り、のぼせた"気"は降りる。」といっています。

また「老人の養生」として、「老いて後は、一日を十日と考えて日々を楽しみなさい。」、「年老いてきたら、徐々に用事を省いて少なくしなさい。用事が多くなれば、気疲れして心の楽しさを失う。」といいます。

その他、睡眠、あんま、針灸、医者・薬の選び方等、様々に含蓄があります。目次だけ見てもとても味わい深いものがありますので、読者の皆様にも是非、ご一読をお勧めします。

以上の要約として益軒は、「養生の要訣『十二少』(実際は十一)」を次のように著しています。

「食を少なくし、飲み物を少なくし、『五味』すなはち、食べ物の甘い・苦い・辛い・塩辛い・酸っぱいの偏りを少なくし、色欲を少なくし、おしゃべり を少なくし、事を少なくし、怒りを少なくし、憂いを少なくし、悲しみを少なくし、思いを少なくし、臥すことを少なくすべきである」。恐らくほとんどの現代 人は、この逆のことばかり行なっていると思われます。謹んで拝聴するのみであります。

当欄のタイトル「過ぎたるは及ばざるに劣る」は、山中太木博士(大阪医科大学元学長)愛用の言からいただいたのですが、博士もまた、益軒と同じ境地であられたのでしょう。改めて博士に感謝。

参考図書/「口語養生訓」
貝原益軒原著
松宮光伸訳註
(日本評論社)
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