ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

コラーゲン

その102.コラーゲンは関節の痛み(炎症)を 軽減させ骨本来の免疫力を向上させる

生理学博士 久間英一郎

 筆者の講演会では、骨とコラーゲンの関係について、魚の煮こごりを例に出して説明してきました。
 今回は少し違う角度から書いてみたいと思います。もしこの世にコラーゲンがなかったら、野球を始めかなりのスポーツは成立しないのではと思います。なぜか?160キロの速球を受けるキャッチャーミットは、強いだけでもダメ、柔らかいだけでもダメ、強さと弾力性を兼備してないとダメなのです。これを満足するのがコラーゲン。だからコラーゲンを主成分とする動物の皮が採用されたのです。
 「強さと弾力性」このコラーゲンの特性が見事に生かされているのがヒトの活動を支える運動器(骨・関節・筋肉・腱など通称ロコモ)なのです。この神の見事な配剤のおかげで私達は、今や100年近くも体を自由に動かし、仕事や運動に人生を謳歌することができる訳です。
 ところが、このコラーゲンの特性は加齢と運動不足、肥満、喫煙、食生活、冷え等も手伝って20代後半から徐々に働きが低下します。そして50の大台を迎える頃(女性は閉経期)から急激に前述の運動器の機能が低下し、介護、寝たきりのリスクが増大するのです。これがロコモティブシンドロームです。
 ロコモを代表する症状が変形性膝関節症です。主な原因は関節軟骨の50%を占めるコラーゲンが老化によってすり減った結果、周辺に炎症を起こすからです。ひどい時には熱をもったり、水が貯まったり、変形したりします。
 変形性膝関節症の予防と対策は、まずは筋肉運動。作家の五木寛之氏は歯を磨く際、右側の歯を磨く時は右足一本で立ち、左側の歯を磨く時は左足一本で立って日常の中で筋肉運動しているそうです。特別な運動しなくても散歩を増やすとか、スクワットを楽しむとか、筋肉運動をぜひ日常化していただきたいと思います。90歳を越えても運動すれば筋肉は増えるそうです。
 次は、関節の癒し。運動の後には関節周辺をマッサージしたり、関節や筋肉を冷やさないことも重要です。
 そして最後は、コラーゲン。コラーゲンをしっかり摂取することによってコラーゲン合成力が上がりますので、前述の「強さと弾力性」が向上し、骨関節の代謝(破骨細胞と骨芽細胞の働き)即ち、「スクラップアンドビルド」が円滑に進むのです。
 さらにコラーゲンは、関節のなめらかな動きを助けるヒアルロン酸の合成も高めますので関節のケアーにはまことに有難いことです。
 城西大学の真野博先生は、「コラーゲン完全バイブル」(幻冬舎)の中で、コラーゲンが軟骨の変性を防ぎ、免疫力の向上に寄与することを示唆する臨床例を紹介しています。
 最後にエピソードを一つ。今年も講演会にご参加いただいた99歳の新潟の女性、二年前のこと。筆者が玄関まで見送ろうと彼女の荷物を持とうとした所、「申し訳ありませんが、手を貸さないで下さい。自分でできることは全て自分でやりますので」と。筆者はただ頭を下げるしかありませんでした。

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