ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

ガン

その88.「笑い」は最高の"抗ガン剤" 免疫力は自律神経のバランス

生理学博士 久間英一郎

 最近、「食」はそれほど悪くないのに「病気になった」「体調が改善しない」といった声を耳にします。よく聞いてみると、やはりストレスが影響しているように見えます。
 そこで今回は、ストレスと免疫力について書きたいと思います。
 社会の急激な変化は、ほとんどの人に否応なく様々なストレスを与え続けています。これが様々な病気の主要な原因となっています。
 医師の福田稔先生と新潟大学大学院教授の安保徹先生は、「白血球は自律神経に支配される」ことをつきとめ、これが様々な病気(特にガン)発生のメカニズムの解明につながりました。
 概要を述べます。自律神経には、交感神経と副交感神経があり、この両者がほぼ正反対の働きをしながら生体バランスをとっています。
 ストレスによって緊張した時には交感神経が優位になって「怒り(攻撃)のホルモン」と言われるアドレナリンを分泌し、顆粒球が活性化されます。
 逆に、「笑う」等リラックスした時には副交感神経が優位になってアセチルコリンを分泌し、興奮を鎮め、体内のガン腫瘍等を攻撃するリンパ球を増やすのです。
 安保先生の言葉を借りますと、とかく現代人は「三過ぎ」すなわち「働き過ぎ」「悩み過ぎ」「薬の飲み過ぎ」による過剰なストレスによって交感神経が優位になり、「四悪」を発生させます。「四悪」とは、①顆粒球が増える、活性酸素が激しく炎と化し、文字通り組織に炎症を起こしたり、老化させたりします。②アドレナリンの過剰作用により血行障害が起きると、老廃物や発ガン物質が停滞する。③リンパ球が低下するとガンや感染症に対する免疫力が下がる。④排泄・分泌能の低下によってガンを攻撃するNK細胞等の働きが下がる。以上を指すが、これらが最終的にガンやその他の病気の原因になると指摘します。
 ですから、健康回復には、顆粒球(交感神経)とリンパ球(副交感神経)のバランスが重要になるのです。
 下図は、健康人と胃ガン患者のリンパ球、顆粒球の比較を示しています。ガン患者は顆粒球に比べリンパ球の比率がガクンと低いことがわかります。
 では、副交感神経を優位にしてリンパ球を活性化するにはどうすれば良いか?答えは明らかです。「笑ってリラックス」すること、くよくよ思い悩まず今までの生き方を勇気をもって変えることなのです。
 「笑門来福」、笑う門から健康がやってくるのです。中国上海に「上海ガンの学校」があるそうです。この施設の規則は「まず笑いましょう」とのこと。皆で歌ったり、踊ったり、太極拳や気功を楽しんだりするそうです。そして五年生存したら表彰されるそうです。驚くことなかれ、この学校の五年生存率は何と51%、これは他の医療機関と比べると驚異的な数字と言います。
 倉敷市の伊丹仁朗医師の実験は有名です。先生は、ガン患者19名を"ヨシモト"に連れて行き、三時間思い切り笑わせ、その前後に計測したNK細胞を比較したところ、ほぼ全員数値が増えていたそうです。笑いほど副作用もなく、短時間でこれほど効く"クスリ"は他にはありません。
 ガンだけでなく糖尿病や他の病気に対しても笑いの効用は報告されています。これも「福田・安保理論」から見ると当然のことなのです。
 最後に両先生の力強い言葉を頂戴しましょう。「これからは、ガンを減らすことができること。なぜなら、ガンが起こるしくみさえ理解すれば、だれもが自分でこの病気を治せるようになるからです」(安保先生) 「ガンは治しやすい病気だよ」(福田先生)
 本稿を書いているさなか、安保先生の突然の訃報が届きました。先生の功績に感謝申し上げると共に早過ぎるご逝去に合掌。

前の記事 コラム一覧へ戻る 次の記事
トップ