ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

ガン放射能

その65.りんごはスゴイ!放射性物質除去からガン予防まで

生理学博士 久間英一郎

「りんごが赤くなると医者が青くなる」という諺があるように、それほどりんごは健康によい食品です。確かに昔は病気見舞によく使われたり、お腹をこわした時に、すりおろしたりんごのお世話になった人も多いでしょう。
 今回は、このアップルペクチン(りんごの食物繊維)が放射性物質、特にセシウム137の除去に、さらには、ガンの予防にも役立つことについて書きます。
 富山医科薬科大学名誉教授・田澤賢次博士著「林檎の力」(ダイヤモンド社)によると、チェルノブイリ原発事故によって被曝した子どもたちのうち、ベラ ルーシのシルバースプリングスに住む615人の子どもたちに、21日間アップルペクチンを服用させ、その前後のセシウム137の集積量をダブルブラインド にて調査した論文(ベルラド研究所)が紹介されています。その結果は図1の通り。
 「アップルペクチンを服用した子どもの減少率は63.6%ですが、服用してない子どもは13.9%にとどまっています。驚くべき差です。アップルペクチ ンが体内汚染を除去すること、それもかなり効率がよいことを、この実験は物語っています。」(同著)そしてそのメカニズムについて、「ペクチンは消化管の 中にある放射性物質を吸着して、自分が便として出される時に、これを一緒に運び出しているのです。」(同著)と述べています。
 この実験から博士は、福島原発事故によって放射能汚染が心配される人たちに、りんごをできるだけ皮つきのまま(皮の部分にペクチンが多い)食べるよう薦めています。
 次に博士は、アップルペクチンと抗ガン(腫瘍)作用についての研究成果も発表しています。
 60匹のラットをABCの3つの群に分け、A群にはアップルペクチンを混入していない基礎食を、B群にはアップルペクチン10%を混入したエサを、C群 にはアップルペクチン20%混入したエサをそれぞれ与えました。そして全てのラットに発ガンを促す物質であるAOMを合計11週で11回皮下注射して発ガ ンを観察しました。その結果が図2です。
 基礎食を与えたラットの発ガン率は100%、10%ペクチン投与群は70%、20%ペクチン投与群は45%。アップルペクチンを多く与えた群が発ガン率が低いことがわかりました。
 また、これを裏づける為、腫瘍や炎症のバロメーターとなるプロスタグランジンE2を測定したところ、ペクチン投与群は非投与群に比べて1/4という結果でした。つまりアップルペクチンは、腫瘍や炎症を引き起こす腸内腐敗菌を抑制する(静菌作用)ことがわかったのです。  以上2つの(対放射線と抗ガン)作用を総合的に理解するためのキーワードは、『腸』なのです。
 アップルペクチンがこの2つに有効だったのは、アップルペクチンが腸内の老廃物や異物を便として排出することによって腸内細菌叢の改善、腸内浄化を実現し、ひいては血液(門脈血)の浄化を通して自己免疫力の強化に役立ったからなのです。
 当然のことながら腸機能改善に役立つ物はアップルペクチンだけではありません。日本の伝統食(玄米、野菜、海藻、味噌、醤油、納豆などの発酵食品)は全てその力を持っています。筆者がくり返し"伝統食は日本人の財産"と書く理由もそこにあります。
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