ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

脂肪

その63.「脂肪」の間違いは"死亡"に通ず(上) マーガリンは即刻追放せよ!

生理学博士 久間英一郎

今回から二回に渡って脂肪と健康について書いてみたいと思います。
 一般的に脂肪というと、動物性脂肪は血液をドロドロにし、植物性脂肪は血液をサラサラにすると思っている方も多いかもしれません。国も実際に植物性の油(リノール酸)の摂取を奨めてきたことも事実です。
 ところが、この植物を原料として造られた油の中にとんでもない代物があり、深刻な健康被害をもたらせていることが世界的に問題になっています。それがマーガリンに代表されるトランス脂肪です。
 このトランス脂肪は、植物油の顔をしながら植物油の欠点(酸化しやすい)を克服して安定しており、長期保存もきくとのことで大変に歓迎され、マーガリン を始め菓子パン、クッキー、ケーキ、チョコレート、アイスクリーム、フライ、レトルトカレー、インスタントラーメン、コーヒーフレッシュ等様々な加工食品 に使用されてきました。
 なぜ、このトランス脂肪が問題かと言いますと、製造過程に問題があります。元々の植物油の基本分子構造に水素を添加することによって無理矢理長持ちする構造に変えてしまった結果、自然界には存在しない、まるでプラスチックに非常によく似た構造の食品になったのです。
 『危険な油が病気を起こしてる』(J・フィネガン著、今村光一訳)に興味深い話があります。概要は次の通り。
 自然食品店でマーガリンを売っているF氏は、食品技術者から「マーガリンを顕微鏡でのぞいてみるとプラスチックそっくり」と聞きます。そこでF氏は、あ る実験を思いつきます。マーガリンの塊を小皿にのせ実際に放置したのです。マーガリンが本物の食品であれば蝿や蟻がくるはず。そうなれば自信を持って販売 できると。しかし、結果は「この塊は二年経ってもこのままであり続けているようだった。その間どんな虫も一匹としてその塊に近寄るのを眼にすることはな かった。」、「ひとかけらのカビも生えなかった。」とあります。「マーガリンは、食物ではなく、食べられる形をしたプラスチック」だったのです。
 このマーガリンに使われているトランス脂肪を食べ続けると、私たちの細胞膜(脂肪でできている)が悪影響を受け、細胞の代謝に重大な問題が発生します。
 よく知られているのがコレステロール代謝障害による心臓病です。トランス脂肪がLDLとHDLコレステロールのバランスを崩し、動脈硬化、心臓病のリスクを高めるのです。
 また、糖尿病のリスクも高めます。「トランス脂肪は細胞膜の構造を不安定にするため、いくら身体がインスリンを分泌しても、それをキャッチする細胞膜の受信機能が鈍くなってしまう」(『病気がイヤなら油を変えなさい』山田豊文著)のだそうです。
 勿論、ガンのリスクも高まります。トランス脂肪が活性酸素の発生を高めるので当然のことです。「実際にアメリカでは、ガンによる死亡率の増加とトランス脂肪を含む植物油の消費量の増加がほぼ一致しているというデータが報告されている」(同著)そうです。
 筆者が一番心配するのは、子どもたちに対する影響です。ヒトの脳は、60%が脂肪からできており、三歳くらいまでに脳の神経回路が決定されると言われて いますので、妊婦や乳幼児のトランス脂肪摂取は特に要注意です。トランス脂肪が脳の情報伝達に係る神経細胞に障害を起こすため、キレやすい子どもをつくっ たり、また、アルツハイマーや認知症の原因となったりします。
 このような危険な食品に対し、欧米では法的規制を含む様々な取り組みが進んでいますが、我が国では、やっと問題が認識されつつある程度で困ったものです。
 かくなる上は、我々消費者が賢く行動するしかありません。このトランス脂肪は、商品の原料表示上では、ショートニング、加工油脂、食用精製加工油脂、ファットスプレッド等の名称で記載されている油の中に含まれている可能性が高いので、それらを避けることが肝要なのです。

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