ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

その他

その47. 健康を蝕む有毒化学物質(上) ~経皮毒から子供たちを守ろう~

生理学博士 久間英一郎

今回から2回に渡って、人の身体に入る有毒化学物質について書きたいと思います。初回は「経皮毒」について。
 人の身体に入る有毒化学物質は、口を介して入る経口ルート、空気を介して入る経鼻ルート、それに意外と馴染みの少ないのが今回の皮膚を経由して身体に入るルート、即ち経皮毒です。
 では、具体的に経皮毒とはどういうものに入っているか?それは日用品全般、即ち、シャンプー、リンス、ボディソープから始まって各種洗剤、漂白剤、カビ 落とし、殺虫剤、消臭剤、歯磨き粉、化粧品、生理用品、紙おむつ。さらに壁紙、畳、カーペット、家具、カーテンにエアコン等々に至るまで私たちの身の回り にあふれています。
 これらに含まれる有毒化学物質(経皮毒)は、ほとんどが石油の分子構造を操作して造られたもので、元々自然界には存在しなかったものばかりなのです。人間を造った神も、恐らく自然界に存在しない物質が人間を襲う事態までは想定しなかったのではないでしょうか?
 皮膚表面には本来、皮脂膜や常在菌等によってバリアー(防壁)が形成され、異物の侵入を制限しているのですが、合成界面活性剤の入ったボディーソープ等 で洗うと常在菌が洗い流されて皮膚免疫力を下げるだけでなく、その強力な界面活性力(自然界では混じらない水と油を化学の力で強力に融合させる)によって 皮脂膜を粉砕し、有毒化学物質を容易に体内に侵入させることになるのです。界面活性剤は、有毒化学物質の「運び屋」なのです。 "汚れが良く落ちて便利"の裏側で静かに経皮毒が私たちの体内に入っているのです。
 このようにして体内に入り込んだ有毒化学物質は、体内で分解され難く排出され難いのが特徴です。まさに "出口のない毒"なのです。従って有毒化学物質を使い続けると、皮膚の脂肪の多い皮下組織に蓄積され続け、ある一定の許容量を超えると、血液、リンパ液に 一気に流れ込み、アレルギーの原因になったり、主婦湿疹等の皮膚障害、肝臓障害、がん、貧血、代謝障害の原因になったりします。
 特に筆者が強調したいことは、有毒化学物質の脳に対する作用です。脳には本来、血液脳関門というバリアーがありますが、脳の60%が脂肪から出来ている ため、有毒化学物質が脂肪に溶け込み易く、脳神経細胞膜の脂肪に溶け込んで脳に侵入します。その結果、脳神経伝達物質に悪影響を与え、アルツハイマー、認 知症、自閉症、学習障害、多動性、適応障害などの脳の病気に悪影響を与えることが指摘されています。
 もう一つの心配は、次世代を担う子供たちに対する影響です。特に乳幼児は、ピュアで抵抗力が弱いため、有毒化学物質の経皮吸収が大きく、それだけ打撃も強いことを子育て中の人やこれから親になる人には特に認識して欲しいと思います。
 さらに、この有毒化学物質は、何世代にも渡って受け継がれる『経世代毒性』(小児科医、真弓定夫博士)であることです。気づいた時には遅過ぎたとならないよう気をつけたいものです。
 では、この有毒化学物質から身を守る対策として、先ずは、有毒化学物質の入ったものを出来るだけ使わない。次に、皮膚から入ったものは皮膚から出す。つ まり運動をして体温を上げて汗を出す(汗は毒抜き、塩抜き、ストレス抜き)。経皮毒の侵入経路である細胞と細胞の隙間の成分、コラーゲンを強化して皮膚代 謝を上げる。気功、ヨガ、大気浴、砂浴、乾布摩擦等の手法を用いて皮膚呼吸を促進させる。伝統的日本食、「まごわやさしい」食(まめ、ごま、わかめ、やさ い、さかな、しいたけ、いも)等を積極的に摂り、身体全体の免疫力を上げる等々、出来る部分から実行してください。

前の記事 コラム一覧へ戻る 次の記事
トップ