ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

その他(食)

その43. 「少食」のすすめ ~少食は身体と地球を救う~

生理学博士 久間英一郎

戦後、日本の復興とアメリカの過剰小麦対策に端を発する日本人の食生活の急激な変化は、人類史上、類を見ないものがありました。
 即ち、動物性タンパク質・脂肪、そして白砂糖、加工食品の激増と、反対に炭水化物や繊維質の多い自然な食品の減少です。つまり、わずか50~60年の間に思いっきり食生活が欧米化したことを意味しています。
 食生活が変われば病気もまた欧米化するのが当然です。ガン、脳卒中、心臓病の三大生活習慣病を始め、糖尿病、肥満、アレルギー、高血圧、便秘、冷え性 等々の激増はまさしく"食物が身体をつくる"ことを見事に立証しています。そしてそれは国民の医療費にも見事に表れています。昭和48年に4兆8千億円 だったのが現在では33兆円、まさに健康保険制度もパンク寸前です。さすがに政府も予防医療を打ち出さざるを得ない状態になってきているのが現状です。
 この問題解決の処方箋の一つとして、日本綜合医学会会長の甲田光雄博士が注目すべき提案をされていますので、これをご紹介したいと思います。
 博士はまず「少食こそが健康の原点」とした上で、前述の三大生活習慣病やメタボリックシンドローム、アレルギー他、今日のあらゆる疾病の根本原因は「飽 食と過食」にあると指摘(アレルギー専門医である榎木義祐博士もアレルギーの根本原因は、消化能力を超える過食にあると指摘)しています。
 なぜかというと、消化能力を超えて食べ続けると、それを収納するため胃腸は無理を強いられるので変形したり癒着したりします。それがまた余計に腸の蠕動 運動を悪くし、宿便をさらに渋滞させる悪循環を引き起こすことになるからです。さらには、腸内悪玉菌によって、腸内での腐敗、発酵が起こり、毒素の蔓延、 血液の汚れ、そして終いには前述の病気というコースをたどることになるからです。
 昔から「腹八分に医者いらず」との言葉通り、少食は胃腸の負担を軽くし肥満を防ぎ、様々な現代病を予防し、長寿に役立ちます。実際、東海大学微生物教室 の田爪先生は、次のような実験を行ないました。ネズミをA群とB群に分け、A群には餌を腹一杯食べさせますが、B群はその八分として制限しました。そして 両群の平均寿命を比べてみると、A群は74週、B群は122週。以上、腹八分が長生きすることがわかりました。
 甲田博士は、健康のためには更に進めて"朝抜き2食で腹六?七分"を奨励します。朝食を抜いて55年。1日1食になって25年。生菜食を実行して15年 という甲田博士は、80歳を過ぎた現在でも白髪もなく睡眠4時間で益々元気にご活躍されています。そして、甲田博士の患者さんの中には、まず少食から始 め、加熱食を徐々に減らしていき、だんだんに生菜食に移行していく方法で様々な現代病を治した方々がたくさんいるそうです。
 博士はまた、「肉食半減で8億の飢えた人々を救おう」という運動も起こしています。牛肉1kgを生産するのにトウモロコシが8kg必要だそうです。今、 世界で生産されるトウモロコシの量は約6億トンで、その内4億トンが牛の餌に使われているといいます。もし、肉食半減が成功すれば、2億トンが余ることに なり、これで飢えた8億人に1日2400kcalのトウモロコシが配給できる計算となるとしています。
 肉食半減は、健康にも役立ち、飢餓対策にも役立ち、また地球環境にも役立つのです。
 博士は言います。「少食というのはなるべく動植物の『いのち』を無駄に殺生しないという愛と慈悲の具体的表現であります。この愛と慈悲の少食を守る者に 天は健やかに老いるという幸せ与え給うのであり...過食、飽食を続け、動植物の『いのち』を無駄に殺生している者に対して、天は、『疾病』という警告を与え るのであります」と。そして、「...いままでのような人類独尊という差別思想を根本的に改め、単に人類だけでなく地球上に生存するすべての『いのち』と共存 共生の生活を行なうこと」が重要と指摘しています。
 食を無駄にし、飽食の限りをつくし、病気に苦しむ現代人は、甲田博士の少食の思想に大いに学ぶべしと思います。

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